鏡を見て、なんとなく疲れが抜けない。健康診断の肝臓の数値は「まあ大丈夫」と言われた。お酒はほとんど飲まないから、脂肪肝なんて自分には関係ない——そう思っていませんか?
管理栄養士の大熊まゆです。今日は、いま静かに増えている「脂肪肝」の話を、最新のガイドラインと研究をもとに、できるだけやさしくお伝えします。
「非アルコール性脂肪肝」は、名前が変わりました
まず、大きなニュースから。2026年4月、脂肪肝の診療ガイドラインが6年ぶりに改訂されました。これまで「NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)」と呼ばれてきた病気が、「MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)」という名前に変わったんです。
「非アルコール性」という否定形の言い方や、「fatty(脂肪)」という言葉が、患者さんを傷つける表現になりかねない——そんな国際的な議論があって、呼び方が見直されました。名前の変更って、実は「お酒を飲まない人の脂肪肝も、きちんと向き合うべき病気ですよ」という宣言でもあるんですね。
そして新しい定義では、脂肪肝を「肝臓だけの問題」ではなく、糖尿病・高血圧・脂質異常症・肥満といった全身の代謝とつながった病気としてとらえ直しています。事実、脂肪肝がある方は、心不全を新たに発症するリスクが一般の人のおよそ1.5倍という大規模研究も紹介されました。肝臓のサインは、体全体からの手紙なんです。
「お酒を飲まない」「太っていない」でも安心できない
脂肪肝というと、お酒の飲みすぎや肥満をイメージしますよね。でも今は、お酒を飲まない人、それほど太っていない人でも脂肪肝が増えています。日本人を対象にした研究をまとめた解析では、脂肪肝はおよそ4人に1人にみられ、とくに男性では3人に1人以上という報告もあります。世界全体で見ると、およそ3人に1人という数字も出ているほどです。
MASLDと診断されるのは、まず脂肪肝(肝臓に脂肪がたまった状態)があって、そのうえで次のような代謝機能障害の要素が1つ以上ある場合です。ざっくり言うと、その代謝の要素はこんなサインです。
- おなかまわりが大きめ(腹囲の目安:男性94cm・女性80cm超)、またはBMIが23以上
- 血糖が高め(空腹時100mg/dL以上、HbA1c 5.7%以上など)
- 血圧が高め(上が130、下が85mmHg以上など)
- 中性脂肪が高め、またはHDL(善玉)が低め
どれも「まだ病気じゃない」と見過ごしがちな数字ばかり。だからこそ、脂肪肝は「気づいたときには進んでいる」ことがあるんです。
いちばんお伝えしたい「夏の落とし穴」
ここからが、今日いちばんお伝えしたいことです。
日本人の2型糖尿病の患者さん約6,000人を調べた最新の研究で、肝臓の数値(AST・ALT)には季節の波があることが分かりました。晩秋から初冬にかけて高くなり、夏にいちばん低くなるんです。
たとえばASTが基準を超える人の割合は、夏の15.0%から秋には17.7%へ。ALTでは20.6%から23.2%へと増えていました。
そして大事なのがここ。脂肪肝を見つける目安の境界線あたりにいる人では、約9人に1人が、測った季節によって「セーフ」か「要注意」かの判定が変わっていたんです。
つまり——夏の健康診断で「肝臓の数値は問題なし」と言われても、それは季節のせいで低めに出ていただけかもしれない。しかもこの研究では、数値の季節の振れ幅が大きい人ほど、血糖のコントロールも乱れやすい傾向がありました。振れ幅そのものが、体の不安定さのサインになりうる、というわけです。
甘い飲み物と、私のちょっとした反省
脂肪肝の大きな原因は、お酒だけではありません。甘い飲み物のとりすぎも、静かに肝臓の負担になります。
同じ「糖」でも、果物を噛んで食べるときはゆっくり体に入っていきます。でも液体になると吸収が速く、短時間で肝臓にどっと届いてしまう。だから搾りたてのオレンジジュースでも油断はできないんですね。
実は私、甘い飲料は基本飲まないのですが、運動のあとにコンビニのスムージーをよく飲んでいた時期がありまして…(笑)。「スムージーも気をつけて」と聞いて、正直ドキッとしました。ゼロにする必要はないと思っていますが、私自身も見直したいと思っています。
「全部やめる」より、今の3つ
ここまで読んで、少し不安になった方もいるかもしれません。でも大丈夫。私がいつもお伝えしているのは、「全部やめる」より「今の自分に効く3つに絞る」ということです。
たとえば、こんな順番はどうでしょう。
- ① 甘い飲み物を「毎日」から「たまに」へ。まずは1日1本を水やお茶に置き換える
- ② 夕食に、たんぱく質+色の濃い野菜を意識する(鮭+トマト+ブロッコリーなど)
- ③ 健診の数値は「夏の1回」で安心せず、季節を変えてもう一度見る
肝臓は、文句を言わずに黙って働いてくれる、とても我慢強い臓器です。だからこそ、こちらから少しだけ気にかけてあげる。それだけで、体はちゃんと応えてくれます。
あなたは今、自分の肝臓の状態を「自分ごと」として見られていますか? 誰かに言われたからではなく、自分で理解して、自分で選ぶ。その一歩を、今日から一緒に始めていきましょう。
大熊まゆ|管理栄養士・健康運動指導士・NRサプリメントアドバイザー・健康コンサルコーチ®️
※本記事で紹介した季節変動の研究は、日本人の2型糖尿病患者を対象とした観察研究であり、食事や運動などの生活習慣の影響を十分に評価できていないため、因果関係の解釈や他の集団への一般化には注意が必要です。健康状態にご不安のある方は、自己判断せず医療機関にご相談ください。
参考文献
1)Toki R, et al. Liver Int. 2026;46:e70743.
2)日本消化器病学会・日本肝臓学会. MASLD診療ガイドライン2026 改訂第3版. 南江堂;2026.
3)日本人のNAFLD有病率メタ解析 PMID:33580453.
4)NAFLD世界有病率メタ解析(38カ国・約30.2%).


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